「がん」といわれたあなたのために

メッセージ
検査にたずさわる
ドクターの思い

ゆうあいクリニック理事長の片山と、PET/CT検査を実施している各クリニックの院長先生方が、検査への思いを語っています。
患者さんに、PET/CT検査についての意識をより高めていただけますと幸いです。

PET検査の役割:片山理事長 × さいたまセントラルクリニック 雫石院長

PET-CTという言葉もだいぶポピュラーになってきました。しかし、多くの方はまだ「ああ、検診でがんを早期発見する機械だよね。」とお思いではないでしょうか?

実は最近国内でおこなわれたPET-CT検査の何と8割が臨床目的(多くは健康保険適用)で、がんと診断された方の最適な治療のために(病期診断)、がんの再発をいち早く見つけるために(転移再発診断)活用されています。

「患者さんのためのPET-CT診断に情熱を注ぐ!現役放射線科医対談シリーズ」第3弾は、埼玉県の県庁所在地さいたま市、しかも東北・北海道・上越・山形・北陸・秋田の各新幹線の発着する大宮駅にほど近い、「さいたまセントラルクリニック」雫石一也(しずくいしかずや)院長とのインタビューをお送りします。聞き手は今回もゆうあいクリニック理事長片山敦です。

【PET検査の役割】
片山 今や臨床PETはがん治療に欠かせないものとなっていますが、ここまで広がったのは、なぜだと思いますか?

雫石 先に小澤先生、石田先生がお話をされている通り、臨床PETはがん患者さんにとって最善の治療に繋がります。さらに私は、視覚的なわかりやすさも大きな特長だと考えます。PET画像は全身ですし、悪いところが赤く光っています。その大きさや数などごまかしがきかないため、説明の際、患者さんの理解を得られやすいのではないでしょうか。

片山 CT画像でどこが病気ですと説明されても、そもそも画像が輪切りですし、病変以前に体のどの部位なのかもわかりにくいですよね。

雫石 患者さんに理解していただくツールとしては、画像検査の中でもPETは特別わかりやすいと思います。

片山 診断をつける時、治療を行う時、いろんな医療のさまざまな局面において患者さんの理解・納得って大事ですよね。PET画像はどこに病変があるのか一目瞭然なので、臨床の先生も説明用にMIP画像※1を希望される方が多いですね。

雫石 そうですね。納得することで、患者さんも前向きにがん治療に取り組むことができ、その結果、予後も良くなるのではないでしょうか。

※1:Maximum Intensity Projection(最大値投影法)の略。造影された病変を分かりやすくした画像。

PET検査の役割:片山理事長 × さいたまセントラルクリニック 雫石院長
【PET検査の広がり】
ふつう「医師」といえば、患者さんに直接接して治療をおこなうというイメージですね。
しかし、皆様は「Doctor's doctor(医者達のための医者)」という言葉をご存じでしょうか。医師が適切な治療や診断をおこなうのに、なくてはならない医師のことです。
・麻酔科医は大きな手術には必ず立ち会い、麻酔管理のみならず患者さんの全身状態の把握や安全な手術の進行を助けます。
・病理医は細胞から臓器、時にはご遺体まで、広い分野を扱う医師です。細胞診や生検で取ってきた患者さんの標本を、病理医が正しく診断してはじめて最適な治療が始まるのです。
・放射線科診断医は、レントゲンや超音波、マンモグラフィーやCT、MRIからPETに至るまで、さまざまな画像検査機器で得られた画像を分析し、臨床所見や他の検査結果と総合して考え得る疾患(鑑別診断)を導き出す医師です。内科医の私(片山)から見れば、「頭のてっぺんからつま先まで、なんでこんなにたくさんの病気を知っているんだろう!」と尊敬のまなざしを向けてしまう存在です。


片山 今はPET-CTが主流ですが、PET単体だった頃は、あまり評価されていませんでしたよね。

雫石 PET単体だと、画像がはっきり赤くなればいいんですが、少し集積している場合、それが病的であるのか生理的な現象なのか、判断が難しいケースもありました。でも今は、PETとCT画像の融合もできるため非常に明確になり、がん治療に大きく貢献していると思います。また最近では、がんだけでなくほかの疾患でもPET検査が有効だと医師の間で認識され始めています。

片山 例えばどのような疾患でしょうか?

雫石 心臓サルコイドーシス※1や大型血管炎※2などがそうですね。

片山 心臓サルコイドーシスは、2012年にPET検査が保険適用になりましたね。

雫石 そうなんです。大型血管炎も2018年から適用になりました。ある調査によると、PET検査はがん患者さんの増加はもちろん、先のような疾患をもつ方の利用も増えています。このことから、循環器の先生の間でも特定の疾患に対してPET検査は有用であるという考えが浸透しているのが分かります。

※1:臓器に肉芽腫ができる原因不明の疾患。心臓にできると、不整脈など心機能障害の原因になる。
※2:血管の壁に炎症を起こし、さまざまな臓器障害を引き起こす血管炎症候群のひとつ。

PET検査の役割:片山理事長 × さいたまセントラルクリニック 雫石院長
【画像診断専門クリニックの特性】
現代のがん診療の最前線にいらっしゃる臨床医の皆様から、
「がんと診断されたら、今後の最適な治療を選択するためにまずPET-CT検査を」
「がんの治療が一段落したのち、もし転移・再発が疑われたらPET-CT検査を検討」
という評価をいただくようになったPET-CT検査です。
しかし、PET-CT装置や、検査に使う薬剤(FDG)、あるいはFDGを合成するサイクロトロンはなど非常に高価です。
さらに、PET-CT検査や診断をおこなうためには、厚生労働省が定めた

・核医学診断の経験を3年以上有し、かつ、所定の研修を修了した常勤医師が1名以上いること。
・診断撮影機器ごとに、PET製剤の取扱いに関し、専門の知識及び経験を有する専任の診療放射線技師が1名以上いること。
・他施設からの依頼検査(共同利用)が30%以上であること。

などの条件があり、各病院がおのおのPET-CTを保有するにはかなりハードルが高いと言わざるを得ません。
しかし、逆に言えばここに私たちのようにPET-CT検査と診断に特化した「画像診断クリニック」の存在意義があるのです。


片山 毎日お忙しいですか?

雫石 1日20件ほど読影して、さらに常勤の柴田先生と相互チェックをするので、時間的にキツキツです。診断専門医を増やせばいいのですが、埼玉県は人口あたりの医師の少ない県ですので、なかなか豊富な経験のある読影医を探しだすのが、難しいというのが現状です。

片山 画像診断専門のクリニックだからこそ、診断レポートのクオリティは必要ですよね。

雫石 そうなんです。PETを所有する大学病院などでは、放射線科に複数の先生がいますし医療もチームで行うので、診断レポートも最低限のことが書いてあれば大丈夫です。でも私たちは、そのチームが組まれていないと仮定し、がんだけでなく気になる部分、逆にがんではないものも頭から足の先まで全て書き上げるんです。

片山 なるほど、陰性所見も大切ですよね。

雫石 はい。「○○はありません」と書くことも大切です。丁寧に読影し、臨床の先生が要求するコメントを付記できる。これこそ画像診断専門クリニックの特性だと思いますし、我々放射線科医のやりがいにも通じていると感じます。

片山 先生は検診時の面談も行っているんですよね。

雫石 私も柴田先生もしゃべりたい方なので、面談は半分ずつやっています。

片山 面談して、読影して、レポート書いてと、本当に休む暇がありませんね(笑)。
PET検査の役割:片山理事長 × さいたまセントラルクリニック 雫石院長
PET検査の役割:片山理事長 × さいたまセントラルクリニック 雫石院長
【日々のこだわり】
今、全国の医師不足や地域、診療科への偏在が問題になっています。
この文章を書いている2019年時点で、医師の時間外労働の上限は1860時間となり、一般の労働者の上限である720時間(それでも多いですが!)の倍以上に決まりそうな気配です。医師とて人間、サイボーグやアンドロイドではありません。
(ちなみに一般の方々に許容されている放射線自然被曝の限度は1mSv/年ですが、医師の職業被曝限度は50mSv/年と定められています。繰り返しますが医師はサイボーグではありません。)
こうした環境の中、医療機関や医師自身が率先してできるだけ業務を効率化し、適度な休息をはさんでなるべく短時間で効率よく仕事をこなしてゆくように工夫してゆきたいものです。それが必ず患者さんの安全と幸せにつながると信じています。

片山 常に忙しく自分の時間が取れなさそうですが、趣味はいかがですか?

雫石 趣味というほど大げさではありませんが、コーヒーでしょうか。まず朝起きたらコーヒーを淹れて妻と飲みます。クリニックでもコーヒーを淹れることが習慣になっていますね。

片山 こだわりは?

雫石 焙煎まではしませんが、豆を取り寄せミルで挽いています。コーヒーを淹れるのって結構時間がかかるんですよ。沸騰したお湯を受け皿に入れ、温度を87~85度まで下げます。それをまた戻して注ぎ始めるんです。

片山 カッコイイですね。サイフォンで淹れるのもいいですよね。

雫石 このクリニックへ来た際、院長就任のお祝いに簡易サイフォンをいただきまして、それを愛用しています。やはりサイフォンだと味がまろやかになりますし、コーヒーが抽出されていく様子を眺めるのも楽しい。ロートに出がらしが残るので後片付けが大変ですが、何人分でも手間は変わらないので、ほかの先生の分も淹れています。これが仕事前のルーチンですね。

片山 忙しい中でも、ちょっと一息つける時間があるのはいいですよね。

雫石 そうですね。この時間はずっと保っていきたいです。

PET検査の役割:片山理事長 × さいたまセントラルクリニック 雫石院長
PET検査の役割:片山理事長 × さいたまセントラルクリニック 雫石院長
【放射線科医としてのやりがいと展望】
片山 先生はなぜ放射線科医に?

雫石 研修医時代、リウマチ内科を目指していたため、放射線科をローテーションに入れたんです。そしたら、放射線科の先生に「君は読影のセンスがある」「放射線科に入ろう」と毎日勧誘を受けまして(笑)。

片山 そのまま内科に転身することなく、今に至るんですね。

雫石 昔から人のためになることが好きなんですよ。お医者さんの役に立つ、それが放射線科医の醍醐味のひとつかなって。

片山 ドクターズドクターですね。

雫石 未熟な時は役に立ちたいけど立てないジレンマもありましたが、読影の力がついてくると頼ってもらえるし貢献もできる。

片山 だから診断レポートも陰性所見まですべて書くんですね。

雫石 臨床の先生が貰って助かるレポート、かゆいところに手が届くレポートを心がけています。

片山 これからの展望などはありますか?

雫石 今、PET-CTは成熟期を迎えているのに対して、放射線科診断専門医は不足しています※1。少しでも読影に興味を持ってもらえるよう、昨年から若い医師を対象にした読影セミナーを開催しています。ただ、私ひとりでは限界があるので、もう少し仕組みを考えないといけないですね。

片山 これからはお互いアライアンスを組み、みんなで新しい先生を育てることも必要かもしれません。長時間のインタビューありがとうございました。

※1:2017年11月1日の時点で、診断専門医・治療専門医を併せ6675人(公益社団法人・日本医学放射線学会)。

PET検査の役割:片山理事長 × さいたまセントラルクリニック 雫石院長
【略歴】
さいたまセントラルクリニック 理事長/院長
雫石一也(しずくいしかずや)
1996年横浜市立大学医学部卒業、放射線診断専門医、医学博士
横浜市立大学放射線科講師を経て、2013年医療法人峯昭会理事長兼さいたまセントラルクリニック院長に就任
1日は珈琲を淹れることから始まる 読影前の一杯はマンデリン、仕事を頑張ったご褒美の一杯はトアルコトラジャが定番

>さいたまセントラルクリニック(埼玉県さいたま市)


ゆうあいクリニック 理事長
片山 敦(かたやまあつし)
1996年横浜市立大学医学部卒業、内科医
病院勤務、診療所院長を経て2004年ゆうあいクリニック理事長に就任
地元医師会役員、高校生から幼稚園児まで4人の男児の父親の顔も持つ

>ゆうあいクリニック(新横浜・台場)

※がん診療目的(検診を除く)のPET-CT検査は健康保険がお使いになれることが多いですが、もとより高額な検査です。保険適応には厳密な条件があります。まずは主治医の先生とよくご相談いただくことをお願いいたします。検査には紹介状が必要です。

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Doctors Interview

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