PET-CTという言葉もだいぶポピュラーになってきました。しかし、多くの方はまだ「ああ、検診でがんを早期発見する機械だよね。」とお思いではないでしょうか?
実は昨年国内でおこなわれたPET-CT検査の何と8割が臨床目的(多くは健康保険適用)で、がんと診断された方の最適な治療のために(病期診断)、がんの再発をいち早く見つけるために(転移再発診断)活用されています。
今回からは、検診のみならず臨床PET-CTにも多大な注力をされている埼玉県所沢市の「所沢PET画像診断クリニック」石田二郎院長とのインタビューを5回の予定でお送りします。聞き手はゆうあいクリニック理事長片山敦です。
石田:既に見つかっているがんの状態把握はもちろん、新たながんが見つかる可能性があることです。がんに罹患された方は、ほかの部位も罹患していることがあります。PET検査により新たにがんが見つかれば、手術の順番や方法も変わってくるため、一人ひとりの患者さんにとってより有効な治療に繋がると思います。
片山:検査時間も短いですし、受けて損はないですよね。
石田:うちで使っているPETは、頭からつま先まで12分くらい。PETは全身撮影が可能というのもメリットのひとつですね。
片山:造影CTだと狙って臓器を撮るので、病変がよほど大きくない限り、ほかにがんがあってもわかりませんし。1割には満たないですが、ダブルキャンサーの方は結構いますよね。
石田:左右に乳がんあったというケースもありました。今はマンモPET※1もあるので、検診を受けるハードルがもっと下がるといいですね。
片山:所沢PET画像診断クリニックもマンモPETを導入されていますよね。ゆうあいクリニックにもありますが、まだ全国的にも台数が少ないですね。
石田:やはり、機器も安くはありませんし、専用の部屋も必要なので、導入している施設が限られるのは仕方ないのかもしれません。
※1:乳房専用のPET検査機器。
石田:そうですね。PETやCTは撮影して終わりではありません。異常箇所の有無、病変の位置、大きさなどを放射線科の医師が読影※1し、患者さんの治療を担当する臨床の先生に診断レポートを提出します。臨床医はレポートを見て治療方針を決めるため、読影能力というのはとても重要なんです。
片山:外れないよう無難に可能性ばかり書いても、治療方針は決まりませんしね。ゆうあいクリニックでも“これ”というように、明らかにするようにしています。おかげで、臨床の先生から、「ゆうあいさんのレポートは“何”とはっきり書いてあるから助かる」と感謝されました。また、読影医が気になった症例は一筆書いて伝えるようにしています。
石田:やはり、臨床医との信頼関係も大切ですよね。うちも、フィードバックを返してくれる臨床の先生が多いです。治療をする臨床医、病変を見極める読影医など、患者さんに携わる人が信頼の上連携することで、治療の精度も向上していくと思います。
※1:PETやCTなどの画像を見て、患者さんの病気の有無や広がりなどを検討すること。
※各クリニックの検査実績はこちらをご覧ください。
所沢PET画像診断クリニック
http://www.toko-pet.jp/performance/index.html
ゆうあいクリニック
https://www.shinyokohama.jp/clinic/inspection_result.html
石田:父方の男が全員医者なんですよ。高校でも先生たちから「おまえは医学部だろ」と言われ、選択の余地はありませんでした(笑)。
片山:なりたかった職業は?
石田:特になかったですね。
片山:では、放射線科にはなぜ?
石田:変わったことができそうだし、全身を診るのが楽しそうで。また、先に放射線科で全身を診ておけば、途中で内科や外科に専門を変えたとしても、壁が低そうだと思いました。
片山:でも、専門を変えることなく放射線科を続けられたんですね。どこに面白味を感じたんでしょうか?
石田:1989年のアメリカ留学がきっかけのひとつです。当時の日本は、外科などに比べ放射線科の地位が低かったんです。でも、アメリカの放射線科は新しい機械を使うなど先端の医療を担う科で、立場も全く違いました。
片山:治療ですか?
石田:僕は診断で、MRIや核医学などの経験を積み多くの刺激を受けました。でも、帰国したらIVR※1をやれといわれて(笑)。全然違うんですけど、やってたら面白くなって。
片山:IVR好きな人は好きですよね。
石田:もうハマっちゃって(笑)。IVRをやっていると患者さんを受け持てるので、やっと医師になれたと実感できて嬉しかったですね。
片山:そして今に至ると。
石田:ええ、ここに来たら、もう抜けられない世界に(笑)。
※1:Interventional Radiologyの略。レントゲンやCTなどの画像診断装置で体内を見ながら、カテーテルなどで治療を行う。
石田:産業医もやっているので、純粋な休みは月2日くらいです。子どものイベントに合わせて、休日をとっています。
片山:じゃあ、授業参観とかは?
石田:ほぼいきます。文化祭も運動会も。休日は自分ではなく、子どものために使う感じですね。
片山:お子さんは何人でしたっけ?
石田:女・男・女の3人です。長女は大学を卒業してトロント、長男は大学生、次女は中学生です。女の子かわいいですよ(笑)。
片山:うちは子ども4人ですが、全員男。これは想定外でした(笑)。毎日誰かしらの勉強をみていますよ。
石田:長男は中学から全寮制、浪人中から大学がある仙台に移ったので、一緒に暮らした時間が短いんですよ。ようやくお酒が飲める年齢になったので、一緒に飲むためだけに仙台へ行ってます。
片山:休日を使って?
石田:いや、仕事が終わったら行って、飲んで、泊まって、朝一で戻ってくるんです(笑)。子どもを育てるのは、非常に大変で、腹が立つことも多いし、お金もかかりますけど、それ以上の楽しさがあります。
片山:子どものために働いている感じですよね。
石田:本当、そうですね。
現代のネット社会、玉石混淆の情報があふれていますが、ぜひ皆様お一人お一人に私たちの経験や技術、病気や検査、治療に関する正しい情報、そして患者さんを思う真心を届けたいと願って私たち医師をはじめとした医療従事者、医療機関スタッフは日々仕事に励んでおります。
片山:これからやってみたいこと、目標はありますか?
石田:直接PETとは関係ないんですけど、ブランチを都内に出したいなと。
片山:分院ですか。
石田:開業医の先生には、PETという名前は知っているけど、詳しくは知らないという方が結構います。でも、その先生の患者さんの中には、がん予備軍だったり、がん罹患歴のある方もいるわけです。だから、そのような方をフォローしたいんです。PET検診を受けるだけでも見つかることがあるので、認識の裾野を広げたいですね。都内のターミナル駅周辺にクリニックをつくり、臨床PETの適応であるとか、この人は撮ったほうがいいとかアドバイスしながら、必要な患者さんにはここで検査を受けてもらう感じで。もっと認識を高めないともったいないですから。
片山:検診でもなく、臨床でもなく、その中間へのアプローチですね。
石田:ええ、今そこが一番抜けているところなので。大学病院や大きな病院の医師だけでなく、患者さんにとって身近な開業医の先生たちがPETを普段使いできるようにしたいです。
片山:楽しみにしています。今日は、ありがとうございました。
石田二郎(いしだじろう)
1984年東京医科大学医学部卒業、放射線診断専門医、PET核医学認定医、検診マンモグラフィ読影認定医師、日本医師会認定産業医、医学博士
アリゾナ大学放射線科、東京医科大学放射線医学教室講師、泰山医学院(中国山東省)客員教授などを経て、医療法人永仁会 所沢PET画像診断クリニック院長に就任、現在は同法人副理事長はじめ、多くの医療法人、学校法人、社会福祉法人などの役員を兼務する。
1男2女。トロントに暮らす長女、仙台で父を超える医師を目指して修行中の長男、中学生の次女それぞれにダンディなパパぶりを遺憾なく発揮している。
ゆうあいクリニック 理事長
片山 敦(かたやまあつし)
1996年横浜市立大学医学部卒業、内科医
病院勤務、診療所院長を経て2004年ゆうあいクリニック理事長に就任、ゆうあいクリニック台場(東京都港区)院長も兼任。
地元医師会役員、高校生から幼稚園児まで4人の男児の父親の顔も持つ。
ゆうあいクリニック(新横浜・台場)
※PET検査は保険がきくとはいえ大変高額な検査です。保険適応には厳密な条件があります。まずは主治医の先生とよくご相談いただくことをお願い致します。検査には紹介状が必要です。