【がん診療におけるPET/CT検査の意義】
片山 先生は臨床PETについてどうお考えですか?
小澤 「患者さんの役に立つ」。この一言に尽きると思います。がんだと思って手術をしたら良性腫瘍だった、開腹したけど予想より進行していて何もせず閉じた。このように、がんは思わぬ問題が起きることがあります。
片山 思わぬ転移で、ステージⅠと思っていたものが一気にⅣまで上がることもありますね。
小澤 がんは小さい病変でも転移があっても不思議ではないんです。また同時に複数の種類のがんが存在することがあります。
臨床PETは全身のがんの状態を把握できるので、患者さん一人ひとりに最適な治療方針を立てることができます。
片山 でも、PETに写りにくいがんもありますよね。
小澤 ブドウ糖を大量に使う脳や、尿の通り道である腎臓などはFDG※が多く集まるので、ほかの検査のほうが有用です。ただ、当院で使用しているPET/CTなら、PETと同時にCTも撮影できます。病変をCT画像でも確認できるので、大きなメリットだと思います。
※1:ブドウ糖によく似た検査薬剤。FDGの集まり具合をPETカメラで画像化することで、がんの有無や位置、大きさを調べることができます。
※PET検査は保険がきくとはいえ大変高額な検査です。保険適応には厳密な条件があります。まずは主治医の先生とよくご相談いただくことをお願い致します。検査には紹介状が必要です。
ゆうあいクリニック(新横浜・台場) http://www.shinyokohama.jp
【PETが発展した歴史】
片山 PETはいつからあったんでしょうか?
小澤 70年代には検査の基礎が確立していました。日本で導入されたのは94年からです。しかし保険適応が遅れたため、日本ではがんの臨床検査より検診から始まったという歴史があります。価格が安い韓国へのPET検査ツアーが組まれたこともありました。2002年から保険適応になったことで、がん患者さんにも広く利用していただけるようになり、現在、臨床PETだけでも1年間で60万件まで伸びています。わが国の年間新規がん罹患者数はおよそ100万人ですから、単純に考えると半数以上の方が臨床PETを受けていることになります。
片山 転移・再発診断での利用はどうでしょうか?
小澤 とてもいいと思います。実際、手術後の定期検査で「再発は無いと思っていたらいっぱいありました」ということがよくあります。また、再発診断でPET検査をした方の生命予後が伸びている実感はありますね。
片山 私の知っている患者さんでも肺がんのオペ後、定期的にPET/CTを受けていたら5年目にたまたま膵がんが見つかりました。肺がんの5年生存率は44.7%※1、膵がんは9.2%※2ですが、PETで早期発見できたため今もご存命です。
小澤 やはり再発診断としてPETを受けることは有効ですし、安心にも繋がりますね。できれば医師の判断のもと定期的に受けていただきたいです。
※1:全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査(2017年7月計)による全症例
※2:全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査 KapWeb(2017年5月集計)による全症例
【小澤医師が放射線科医をめざした理由】
片山 そもそも先生はなぜ医者になろうと?
小澤 浪人中に見た『赤い疑惑※1』がキッカケです。
片山 そうなんですか(笑)。では、最初から放射線科を?
小澤 いえ、医学生になりたかったんです。三浦友和がかっこよくて(笑)。もともと医学部ではなく、生物系の学部をめざしていたんですが……。
片山 生物系から、途中で医学部に転向。
小澤 そうです。百恵を見て(笑)。
片山 医学部の勉強はいかがでしたか?
小澤 楽しかったですよ。一番おもしろかったのは、細菌学と寄生虫学。寄生虫かわいいんですよ。
片山 医学の道に進んでも、やはり生物が好きなんですね。研修医時代はどうでしたか?
小澤 当時、がんといえばオペが一般的で、外科で診きれなくなったら放射線科にまわされる傾向がありました。だから、放射線科にいる患者さんは末期状態で、病棟で亡くなられる方がたくさんいました。
片山 それで核医学※2をめざしたんですか?
小澤 あの頃は人手不足もあり、核医学も普通の診断も両方していましたし、治療も何でもやっていました。そのおかげでMRIやPETなど、どんなものでも診断できるようになりました。
※1:1975年に放送されたドラマ。山口百恵が白血病を患う娘役、その父役の宇津井健が放射線医学を専門とする医学部助教授、三浦友和が医学部の学生役として出演。
※2:ごく微量の放射線を含む薬を用い、病気の診断や治療をする医学の専門分野。
【休日の過ごし方】
片山 お休みの日は何を?
小澤 ギターを弾いたり、プラモデルをつくったり。最近、気力が落ちてきたのか、長時間は難しいですね (苦笑)。
片山 お酒は飲まれるんですか?
小澤 毎晩飲んでます。料理が好きなので、自分でつまみや食事をつくることもありますね。先日もミートソースをつくったんですよ。
片山 そういえば、燻製もやるんですよね。
小澤 定期的につくっています。娘からリクエストの連絡がくるので、最近はベーコンづくりに励んでいます。ご近所にも配るので、毎回、豚1頭分くらいのバラ肉を買ってくるんですよ(笑)。だから、スモーカーも50リットルのドラム缶を利用した自作品です。
片山 どれくらいでできるんですか?
小澤 スモークの時間は2~3時間ですが、その前の準備に時間がかかるんです。大量の塩をつけて1週間以上寝かせたあと乾燥させてと。でも、これをしっかりやらないと、おいしいベーコンはできません。燻製もがん治療も、事前の準備が大切ってことですね。
【これからの抱負】
片山 こちらにいらっしゃる前は、横浜市立大学医学部放射線科の医局長兼講師をなさっていたんですよね。
小澤 院長のお話をいただいた時、今後について考えているところでした。大学に残るという選択肢もあったのですが、いかんせん論文を書くのが嫌いで (苦笑)。
片山 クリニックでは、PETだけでなくさまざまな検査を行っていますが、不安はありませんでしたか?
小澤 今まで何でもやってきたおかげで、まったく不安はありませんでした。ここにいる医師たちも、一部の検査に偏ることなく、すべて診ることができます。そうでないと、きちんとした診断はできませんから。
片山 頼もしいですね。ところで、院長の仕事はいかがですか?
小澤 大変ですよ(笑)。患者さんの人生に関わることですから、「良きに計らえ」では務まりません。それに、何もしない院長では、スタッフと信頼関係を築けませんし、信頼関係がなければ、クリニックもぎこちない雰囲気になります。患者さんはがんという不安を抱えて、クリニックにいらっしゃいます。検査中少しでも気持ちがやすらぐよう、ゆうあいクリニックならではの雰囲気づくりを大切にしています。
これからも、前向きにがん治療に挑んでいただけるよう、不安を少しでも解消できるよう、スタッフとともに患者さん目線で考えたクリニックづくりに尽力していきます。
片山 長時間ありがとうございました。
【略歴】
ゆうあいクリニック 理事長
片山敦(かたやまあつし)
1996年横浜市立大学医学部卒業、内科医
病院勤務、診療所院長を経て2004年ゆうあいクリニック理事長に就任、ゆうあいクリニック台場(東京都港区)院長も兼任
地元医師会役員、高校生から幼稚園児まで4人の男児の父親の顔も持つ
ゆうあいクリニック 院長
小澤幸彦(おざわゆきひこ)
1985年旭川医科大学医学部卒業、放射線科専門医、医学博士
横浜市立大学放射線医学講師、医局長を経て、2004年ゆうあいクリニック院長に就任
趣味はサイクリングと料理、自転車で四国旅行も経験、ベーコンづくりの腕はプロ級
※PET検査は保険がきくとはいえ大変高額な検査です。保険適応には厳密な条件があります。まずは主治医の先生とよくご相談いただくことをお願い致します。検査には紹介状が必要です。
ゆうあいクリニック(新横浜・台場) http://www.shinyokohama.jp